緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「ははは。フロレンティーナがわがままを言ってすまないね。でもジギスヴァルトに頼んで本当にいいの? 忙しかったら他の人間に頼むけど?」

「……いや、構わない。アンの店には俺が行く」

 ジギスヴァルトの言葉にヘルムフリートは「そう? 悪いなぁ」と言ってほくそ笑む。

 フロレンティーナがこれからもアンの花束を部屋に飾りたい、と言っているのは本当だが、常識的に考えて花束の注文は王国騎士団団長の仕事ではない。
 しかしヘルムフリートはフロレンティーナと協力し合い、ジギスヴァルトにわざわざおつかいを頼んだのだ。……全ては幼馴染の初恋を応援するために。

「うん! いってらっしゃい! アンさんによろしくね!」

 騎士団の団舎前でヘルムフリートと別れたジギスヴァルトは、待機させていた馬車に乗り込み、アンの店へと向かわせる。

 馬車の窓から外の景色を眺めていたジギスヴァルトは、アンの店を初めて訪れた時のことを思い出していた。




 ──3ヶ月前。

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