緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 選んだ花をスパイラル状に組んでいくと、可愛い雰囲気の中にも大人っぽさが垣間見える花束が完成する。

「うむ。相変わらず見事な腕前だ」

「えへへ。有難うございます。殿下に喜んでいただけたら嬉しいです」

「勿論フロレンティーナは喜ぶだろう。……ああ、そう言えばヘルムフリートがアンによろしくと言っていた」

「そうなんですね。私からもどうぞよろしくとお伝え下さい。あ、そうだ! またプレッツヒェンを作ったんですけど、お時間があるなら召し上がって行かれますか?」

「それは嬉しい。是非いただこう」

 時間が無ければせめてクロイターティだけでも、と思っていたのでジルさんが了承してくれてホッとする。

「良かったです! じゃあ準備しますので、温室の方でお待ちいただけますか?」

「わかった」

 私は店のドアに掛けているプレートを『閉店』にすると、お湯を沸かしながらプレッツヒェンとクロイターティの準備をする。

 朝に考えた通り、ローズマリンとハーゲブッテ、イングヴェアを入れたポットにお湯を注ぐと、爽やかなクラテールの香りが鼻をくすぐる。
< 134 / 326 >

この作品をシェア

pagetop