緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「なら大丈夫なのかな……? って、あれ? もしかしてフィーネちゃんは貴族のご令嬢……?」

 よく考えたら平民の少女が一人で馬車に乗ってやってくるなんてありえないのだ。

「あら? お兄様はアンさんに何もお伝えしておりませんの? 全くお兄様ったら!」

 フィーネちゃんがぷりぷりとヴェルナーさんに文句を言っている。そんな姿もとても愛らしい。けれど、何だか嫌な予感がするのは気のせいだろうか……。

「ええ、わたくしの家門は貴族の末席に名を連ねておりますわ」

「えぇっ?! 貴族?! フィーネちゃ……いや、フィーネ様、今までのご無礼をお許しください!!」

 嫌な予感が的中してしまった。私は貴族のご令嬢をちゃん付けで呼んでいたことになる。そうなると当然ヴェルナーさんも貴族のご令息になるわけで……。

 ちなみにジルさんとヘルムフリートさんも当然ながら貴族だった。だけど二人には身分を気にせず接して欲しいと言われたから、相変わらず普通に接しているけれど。

(こういう場合はどうすればいいの?! まさか貴族が直接お店に来るなんて思わないよね!!)

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