緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 あの日の花はローゼにフィングストローゼ、レースラインやヴィッケ……お店でも定番の花たちだ。
 今から準備をすれば問題なく用意できるだろう。

(装花する場所がそう多くなくて良かった……!)

 婚約式の花は何とかなりそうだと、一安心した私にフランクさんがとんでもないことを言い出した。

「あ、婚約式を終えた半年後に婚儀を行う予定でして、その時は会場中を装花することになるかと」

「……は?! 今回だけじゃないんですか?!」

「はい。婚約式の出来次第ではありますが、余程のことがない限りは引き続き婚儀の装花もお願いすることになります。それに王女殿下と侯爵閣下たってのご指名ですから」

 ──私に拒否権はない、とフランクさんは言いたいのだろう。

 婚約式の装花ならギリギリ大丈夫だけれど、更に豪華絢爛となる婚儀の花は流石に無理じゃないかと思う。

 とりあえず、今は婚約式の花に集中して、婚儀の方はまだ時間があるし、ゆっくり考えることにした。





 フランクさんと打ち合わせが終わった私は、お店に戻り温室の様子を見て回った。

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