緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 新しいお客さんはロルフさんを見ると少し驚いた顔をした。どうやらロルフさんとお知り合いらしい。

「やあ、ロルフ。偶然だな」

「おう! お前も花を買いに来たのか? そんな柄じゃないだろうがよ! わはは!」

「うるさいよ。今日はうちの嫁さんの誕生日なんだよ。お祝いに花をと思ってな。お前が勧めてくれたこの店に来たんだよ」

「そうかそうか、仲がよろしいことで! 嫁さんには『おめでとう』って伝えといてくれよ」

「ああ、伝えておくよ。……というわけでお嬢さん、お祝い用の花束をお願いできるかな?」

「はい! 有難うございます!」

 私はロルフさんのお知り合いから希望の花の有無と好きな色、予算を聞くと花束の作成に取り掛かる。

(お店のことを紹介して貰えて嬉しいな。あ、そうだ。ちょっとおまけしておこうっと)

 ロルフさんは宿屋を経営していたからか、とにかく顔が広い。二人は昔からの知り合いのようで、近況などを話し合っている。

「また騎士団が活躍したそうじゃねぇか。新しい団長ってそんなに強いのか?」

「ああ、彼の実力は本物さ。彼のおかげで命が救われた団員も多いと聞くね」

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