緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「へぇ〜! お前がそこまで評価するなんてなぁ。こりゃあ、この国も安泰だ」

「……そうだと良いんだがね」

「なんでぇ。何か心配事でもあるのか? もしかしてプラトーノフみたいに瘴気溜まりが出来たんじゃねぇだろうな?」

「それがなぁ……まあ、どうせすぐ噂は広まるだろうから言うが、どうやらフロレンティーナ王女殿下が病に臥せられているらしい」

 ロルフさんの会話を小耳に挟んだ私はギョッとする。フロレンティーナ王女は『王国の華』と称されるほど美しい王女だと評判で、心優しい気性も相まって王国内の人気はとても高い。
 そんな方だから、他国の王子や貴族からも求婚者が相次いでいるのだという。

(何のご病気なんだろう……? 早く良くなられるといいけれど)

 王女様を心配しつつ、お祝いの花束を仕上げていく。予算をたくさん提示して貰ったので、かなりのボリュームになった。

「お待たせしました。ロルフさんのお花はこちらで、お客様の花束はこちらになります。こんな感じで宜しいでしょうか?」

「おお! さすがはアンちゃんだ! これでむさ苦しい宿屋が華やかになるよ!」

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