緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 一人暮らしを始めてからも防犯のことを気にしたことが無かった私は、これを機に意識改革することにした。
 私の魔法のことでジルさんたちも心配してくれているし、注意するに越したことはないだろう。




 ディーステル伯爵家から自宅に戻った私は動きやすい服に着替えると、花の様子を見に温室へと向かった。

 婚約式に使うために準備したマイグレックヒェンは、新たに植えたものと切り戻して植え替えたものを合わせるとかなりの量になった。
 いずれの鉢からも緑色の葉が伸びていて、ちょうど婚約式の頃満開になっているだろう。
 それからローゼやフィングストローゼの様子を見て、綺麗に咲くように摘蕾する。
 ちなみに摘蕾とは余計な蕾を間引く作業のことだ。摘蕾することで花に栄養が行き渡り、花の質を上げたり株や根の負担を減らすことができるのだ。
 蕾や花の数が増えすぎると全体的に小ぶりになったり質が落ちるので、摘蕾して花の量や大きさを調整するのである。

 そうして、婚約式用の花の世話を終えた私が部屋に向かっていると、お店の外に誰かがいるような、人の気配を感じた。

(……んん? こんな時間に誰だろう……?)

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