緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「ああ、いたのかジギスヴァルト。気配がなかったから気付かなかったよ。いつも俺の代わりに花束を持って来てくれて有難うな。本当は俺が用意したいんだけどさ」

 ヘルムフリートと呼ばれた人物はジギスヴァルトと同じぐらいの歳の青年で、騎士服を着用しているジギスヴァルトとは違い、王宮魔術師の証であるローブを纏っていた。

「気にするな。それはそうと魔術師団長は随分忙しいみたいだな。目の下に隈ができているぞ」

「まあ、薬を開発するまではね。しばらくこんな調子だろうさ」

 ヘルムフリートが肩をすくめて苦笑いを浮かべる。ジギスヴァルトの指摘通り、彼はここしばらく徹夜続きなのだ。

「ヘルムフリート……! まさか私のために……?」

「ああ、フロレンティーナ! 気にしないで! 僕がやりたくてやっているんだから!」

 ヘルムフリートはフロレンティーナの白い手を取るとギュッと握りしめる。

「……でも……。貴方まで病気になってしまったら、私……!」

「大丈夫だよ。僕は君を救うまで死なないさ……!」

 突如始まった恋人同士のやり取りに、ジギスヴァルトは心の中でゲンナリする。

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