緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 ジギスヴァルトは今まで知らなかった感情に戸惑ってしまう。しかし恋愛経験が皆無なジギスヴァルトは、イライラの原因は疲労だろうと判断する。

(こういう時はアルペンファイルヒェンでも見て和むか)

 アンが手入れをしてくれたおかげで、枯れそうだったアルペンファイルヒェンはすっかり元気になった。
 更にアンのアドバイス通りに、アルペンファイルヒェンを観察しながら世話をすると、綺麗な花を咲かせてくれるようになったのだ。

 その出来事は、今まで魔物を討伐するか、植物を枯らすことしか出来なかったジギスヴァルトに衝撃と感動を齎すこととなった。

 ──それでも彼は気付かない。

 無表情で無感動だった自分の、感情や心が動かされる全ての原因に、いつもアンが関わっているということを。
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