緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 Sランクの魔物を屠る程の実力者で、冷たい美貌を持つジギスヴァルトを、近寄り難い存在だと認識していた団員達は、花を愛でる彼も自分達と変わらない人間なのだと親近感を持つようになり、その内花の世話をするジギスヴァルトを温かく見守るようになる。

 そんな微笑ましい騎士団だったが、一時期崩壊の危機にさらされたことがあった。ジギスヴァルトが大切にしていたアルペンファイルヒェンが枯れかけてしまったのだ。

 執務室に来た時はピンとしていたアルペンファイルヒェンの茎が段々萎れていき、遂にはクッタリとなった時、団員達は恐怖に襲われた。”この花が枯れた時、自分達もまた終わりなのだ”、と。
 団員達がそう思うほどに、ジギスヴァルトは悲壮感を漂わせていた。
 そして彼の心境を現すかのように、騎士団中の空気は凍てつき、雷雲が王宮を覆い、嵐が吹き荒れた……幻覚を団員達は見たという。

 このままでは騎士団が機能せず、強力な魔物が現れても対処出来ないのではないか、と誰もが覚悟した時、救世主が現れた。
 その人物はもうだめだと思われていたアルペンファイルヒェンを見事復活させたのだ。

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