緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
「最近よく言われるのだが……部屋にアルペンファイルヒェンの鉢を置いたからだろうか」

「いや、俺が言ってるのはジギスヴァルトの雰囲気のことなんだけど……。ん? 鉢?」

 ヘルムフリートが「鉢」に反応するやいなや、ジギスヴァルトがアルペンファイルヒェンの鉢をヘルムフリートの前に持ってきた。
 それは一瞬の出来事で、騎士団長の位に就くジギスヴァルトの身体能力の高さを表していたが、ヘルムフリートは内心、能力の無駄遣いだよな、と思う。

 しかしジギスヴァルトの行動から察するに、彼が思いの外アルペンファイルヒェンを気に入っているのだと理解した。

「……へぇ。こんな鉢植えを置いていたんだ。部屋に馴染んでいたから気付かなかった……ってあれ?」

「どうかしたか?」

「そう言えばジギスヴァルトって、植物をよく枯らしてたよね。それなのにこの花は随分元気そうだなって」

 ヘルムフリートはジギスヴァルトの自室に置かれていた鉢の数々を思い出す。

 彼の母親は屋敷の庭に専用の温室を持つほどの園芸好きだった。
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