緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 凄いことを知ってしまったと思ったのに、ジルさんが間髪入れずに否定する。

「え、でも毎週のように花束を贈ってたんじゃ……?」

「む。それは……」

 ジルさんが少し困ったような表情をしている。どう説明しようか考えているようだ。
 でも実際、ジルさんは毎週花束を買いに来てくれていたし、毎回とても愛おしそうに花束を抱えて帰っていた。
 だから私はジルさんが恋人の喜ぶ姿を見たくて、わざわざ慣れない花屋で花束を用意しているのだと思っていたのに。

「ああ、それはね、僕がジギスヴァルトにお願いしていたんだよ」

「……と言いますと?」

「僕はフロレンティーナの病気を治す薬の開発に専念していてね。なかなか時間が取れなかったから、フロレンティーナとも親しいジギスヴァルトにお願いして僕の代わりにお見舞いの贈り物を用意して貰っていたんだ。……まさかその贈り物が花束だと知った時は驚いたけれど」

 ヘルムフリートさんはそう説明してくれた後「ジギスヴァルトにしては気が利いているよね」と言って笑った。

「……む。それは贈り物には花束が良いと団員達が噂していたのを小耳に挟んでだな……」

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