緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 声に何か魔法でもかかっているのか、たった一言だけなのに威圧感が半端ない。

 恐る恐る横を見ると、ジルさんがヘルムフリートさんを睨んでいた。
 ジルさんの表情はまるで感情が抜け落ちたようなのに、その眼光は鋭い刃のようだ。

「ははは。こんな狭い空間で殺気を出すなんてジギスヴァルトは馬鹿だなぁ。ほら、殺気の余波を受けてアンさんが怖がっているじゃないか」

 ヘルムフリートさんの言葉に、ジルさんがハッとした表情で私の方を振り向くと、今度は申し訳無さそうな表情になる。

「……すまない。怖がらせてしまったな」

「……あ、いえ、大丈夫です……!」

 殺気が消え、いつものジルさんに戻ってくれたのだとわかった私は、ホッと胸を撫で下ろす。

「冷静沈着な騎士団長と噂のジギスヴァルトが珍しい反応をするねぇ」

「……黙れ」

 ヘルムフリートさん曰く、私が感じた威圧感は殺気の余波らしいけれど……余波であれだけ怖かったのに、直接殺気を向けられたヘルムフリートさんはケロッとしている。おまけにジルさんをからかう余裕まであるんだ……と思ったところで、私は気になる一言に気がついた。

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