緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長
 ミンゼはすっきり爽やかな味わいだけど、とにかく繁殖力が強いので、地植えなんかするとエライ目にあう。鉢に単体で植えないと、他のクラテールの領域まで侵食してしまうのだ。

「カミルは静穏作用があるので、不安や緊張を解いて、気持ちを落ち着かせてくれるんです。他にも安眠効果があるお茶なので、寝不足っぽいヘルムフリートさんに飲んで貰おうと思っていたんですけど……」

 だけどヘルムフリートさんはすごく良い笑顔で元気に帰って行ったので、余計なお世話だったかも、と思い直す。
 もう用意していたから何となくそのまま淹れたけれど、ジルさんのために別のお茶を用意するべきだったと後悔する。

「……アンは、ヘルムフリートが気になるのか……?」

「……………………はい?」

 ジルさんにはどのクラテールが良いか考えていたら、その本人から予想外の質問をされ、思考が一瞬停止してしまう。

「ヘルムフリートと随分打ち解けていたし、奴のためにお茶まで用意していたのだろう? 確かに良い奴だが、すでにフロレンティーナという相手が──」

「いやいやいや! 違います! 誤解です!!」

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