その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】
〇時間経過。湯船に浸かる翼は、昼間の事を思い出していた。

翼(──家族で囲む食卓)

 キッチンに面した四人がけのダイニングテーブルを囲う四人。香織と賢吾は何かを話している。翼は、チラリと目の前に座る綾人を盗み見た。すると視線に気づいた綾人は微笑み、ドキッとする翼。

 晩御飯は香織の手作りで豪華だ。テーブルの上には所狭しと料理が置かれている。

香織「明日は入学式ね」
翼「うん、私ちょっと緊張してるかも」
賢吾「僕は明日仕事が休めなくて行けないから、寂しいな」
綾人「父さん、すぐ泣かないの」

 しくしくと泣く賢吾を隣に座る綾人が背中をさすった。香織と翼は、微笑ましくその光景を見ている。

翼(なんだ)
 (同い年の綾人君がいたりして、仲良くなれるか心配だったけど、思ったりも上手くやっていけそう──?)

〇廊下 リビング前
 お風呂上がりの翼はリビングから声が聞こえて、そっと中を覗き見る。

香織「翼達が仲良くなれそうでよかったわ」
賢吾「そうだね。綾人もいい子だから、きっと翼ちゃんを支えてくれるはずだよ」

 香織と賢吾は、リビングにあるソファーに座わっていた。微笑み合う二人。

 ソファー:テレビ前のローテーブルを挟んで正面と、向かって右側、ダイニングテーブルを背にしてL字型に設置されている。

翼「(ふふっ、お母さん達仲が良いな)」
 
 翼はそーっと音を立てないように、階段を登り二階へ移動する。

翼(私も、綾人君と少しずつ仲良くなっていけるといいな──)

 二階には、翼の部屋の手前に綾人部屋がある。綾人の部屋の前で立ち止まった翼は、扉を見つめた。

翼(……この扉の向こうには、綾人君がいるんだよね)
(お母さんは夜遅くまでパートで忙しくて、怖がりながら夜一人で寝ることが多かったから)

 小学生の自分が、真っ暗な部屋の天井の木目が人の顔に見えたり、雷がピカッとして怖るがる様子を思い出している翼。

翼(『家族』がいる気配……っていうのかな? が、なんだか安心するかも)

 ふふっと笑い、鼻歌を歌いながら綾人の部屋の前を通り過ぎようとした翼。
 が、急に扉が開いて中から手が出てくる。パタンと扉が閉じて、誰もいなくなる廊下。

 次の場面では、綾人の部屋の中に翼はいた。何が起こったのかわからない翼の背中には部屋の扉。
 翼の顔に影がかかった。
 翼を見下ろしている綾人。

翼(……ん??)

 唇をかみしめて、混乱している翼。
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