その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】
翼(え、ナニコレ??)
(どーいうことっ!?)
綾人「そこに座って」

 綾人が指さしたのは部屋の中央にある、ベッド前のローテーブル。
 綾人はベッドに座り、まだ動かない翼を見て「ほは、はやく。翼ちゃん」と言う。

 ガチガチの動きで、どうにか移動して座った翼。そこはちょうど、ベッドに座る綾人から見下ろされる位置だった。

 座った翼を見下ろした綾人。
 翼は、その無言の圧に体が縮こまる。ごくり、と唾を飲み込み翼は上目遣いに綾人の顔を見た。

翼(……綾人君、本当に綺麗な顔してるな)
(髪の毛はサラサラしてて、私よりキューティクルが100倍は多い)
(まつ毛も長い。確実に私より長い)
(鼻筋だってスッとしてるし、唇は薄いけど形が良い。どんな彫刻家が作ったら、こんなに綺麗な顔になるんだってくらい)
(あれ? おかしいな、なんでだろ目から涙が……)

 綾人と自分の差に悲しくなる翼。
 でもすぐに「いや、顔じゃなくて中身で勝負!」とブルブルと頭を振る翼。

 クスッと笑いが聞こえた。
 ばっと顔を上げた翼は綾人を見る。綾人は、口元に手をそえて笑っていた。

翼(なんで今笑ったのっ?)
綾人「──翼ちゃん」
翼「!! な、なに?」
綾人「俺の事、香織さんから聞いてなかったんだって?」
翼「……うん。てっきり、賢吾さんとお母さんと私の三人家族だと……」
綾人「俺は翼ちゃんの事、結構前から知ってたよ」

 ほら、と綾人はスマホを取り出し写真をスクロールさせて翼に見せる。
 ホットドッグを頬張っている翼、イェイとピースをしている翼、リビングのソファーで寝ている翼の寝顔が次から次へと映し出される。

翼「なにこれっ!?」
綾人「全部、香織さんが送ってくれたんだ」 

 ピタッと最後に止まった画面には、若干白目を向いて寝ている翼の姿が。

翼「ぎゃあ!」

 パッと手を伸ばし、綾人のスマホを奪い取ろうとするも失敗する翼。

翼「どうかっ、その写真だけでも削除して! お願いしますぅ!!」

 どうかこの通りです、とひれ伏す翼。

綾人「……顔を上げて、翼ちゃん」

 ゆっくり、恐る恐る顔を上げた翼。
 綾人目が合うと、ニコリと微笑まれた。
 その顔にほっとした翼。

翼(よかった、写真消してくれ……)
綾人「──俺、翼ちゃんが家族になってくれて嬉しいよ」

 急に話題が変わり戸惑う翼。けれど嬉しい事を言われたため、照れた表情を浮かべた。

翼「そ、そう? 私も、綾人君とはこれから仲良く出来たらなぁって……」

 顎に手をかけられ、顎クイをされる翼。

翼「!?」
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