S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 和葉は慌てて出勤準備をしているはずの彼を捜す。勢いあまって、ウォークインクローゼットから出てきた柾樹の胸に顔をぶつけてしまった。

「――っと。どうした? そんなに急いで」

 和葉は顔をあげて彼を見あげる。

「柾樹さん! 明日、誕生日ですよね?」
「えっ……あぁ、そういやそうだな」

 自身の誕生日にはあまり興味がないのか、言われて初めて気がついたという顔だ。

(迷惑なのかもしれない。だけど!)

 勇気を振り絞って和葉は言った。

「明日の帰りは遅いですか? 私はちょうどお休みなんです。だから、もしよかったら……お祝いをさせてくれませんか?」

 一緒に誕生日を祝って、それで正直に彼に話してみようと思ったのだ。
 もし、職場で自分の存在を隠されているのだとしたら悲しい。理由を教えてほしい――と。

 柾樹は驚いたように目を瞬き、それから本当にうれしそうにほほ笑んだ。

「明日は早く帰れる予定だ。楽しみにしてる」
「よかった! あっ、欲しいものはなにかありますか?」

 彼は真面目な顔で考え込み、言った。

「和葉の手料理。この前、弁当を食べ損ねてしまったから」
「わかりました。気合いを入れて、フルコースで準備しておきますね」
「ありがとう」

 柾樹の手が和葉の髪をくしゃりと撫でる。その手は大きくて優しくて、和葉の心を温かくしてくれた。
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