S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 彼がテーブルの際に置いたので、スマホは落ちそうになっている。それを直そうと手にしたところで、ふと画面上にポップアップで出てくるメッセージの文面が目に入ってしまった。柾樹はプライベートのスマホのセキュリティには無頓着なほうで、普段からロックもかけていない。

【ゆうべは一緒にいてくれて、ありがとうございました】

 盗み見はよくないと思うのに、和葉の視線は小さな画面に吸い寄せられる。差出人の名前は――。

(みうら……ゆみ……さん。ゆうべ、女の人と一緒にいたの?)

 仕事と言っていたのは嘘だったのだろうか。和葉の手が震える。この指先をほんの少し動かしてメッセージの全文を確認すれば、柾樹がゆうべ、なにをしていたのかがわかるかもしれない。

(ダメ。勝手に見るのは絶対によくないこと!)

 なんとか誘惑を振りきって、和葉は彼のスマホから手を離した。

「とりあえず、店に行かないと」

 動揺にバクバクと波打つ胸を抑えながら、和葉は逃げるように部屋を出た。

 夫婦といえども、スマホを勝手に見るのはルール違反。だけど……見なかった理由はきっとそれだけじゃない。
 和葉の知らない女性と一緒にいる柾樹の姿が、やけにリアルに浮かんできて……和葉の心をかき乱す。

(決定的な事実は、知りたくない)
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