S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
顔をあげると、清楚な美女がにっこりとほほ笑んでいた。
「沙月さん!」
芙蓉の常連客、柾樹の縁談相手であった久野沙月がそこにいた。芙蓉に来てくれるときはお嬢さまらしいワンピースや着物姿のことが多いが、今夜の彼女はキリッとしたブラックのパンツスーツに身を包んでいる。姿勢や立ち居振る舞いが美しいので、どんなファッションもよく似合う。
「育郎さんのこと、聞いたわ。お元気になられたそうで本当によかった」
彼女はもちろん柾樹と和葉のことなど知らないのだろう。邪気のない笑みを向けられて、和葉はいたたまれないような気持ちになる。
(悪いことをしたわけではないけれど、もし沙月さんがあの一件で傷ついていたのだとしたら……)
あれこれ考えてしまって、彼女に「また店にいらしてくださいね」のひと言を言えずにいた。
「沙月」
雑踏の奥から背の高い男性が駆けてきて、彼女を呼ぶ。彼に目を留めた沙月は、大輪の花が咲いたような笑顔を見せた。同性の和葉でも、思わず見とれてしまう美しさだ。
それだけで、長身の男性が沙月の思い人であることがわかった。
彼は沙月より年上、三十代前半くらいだろうか。ダークグレーのスーツにブルーのネクタイ。ちっとも派手な装いではないのに、とても華がある。さらりと流れる長めの前髪、目元も口元も、上品で優しげな印象だ。ワイルド系の柾樹とは、またタイプの違う美男子だった。
「沙月さん!」
芙蓉の常連客、柾樹の縁談相手であった久野沙月がそこにいた。芙蓉に来てくれるときはお嬢さまらしいワンピースや着物姿のことが多いが、今夜の彼女はキリッとしたブラックのパンツスーツに身を包んでいる。姿勢や立ち居振る舞いが美しいので、どんなファッションもよく似合う。
「育郎さんのこと、聞いたわ。お元気になられたそうで本当によかった」
彼女はもちろん柾樹と和葉のことなど知らないのだろう。邪気のない笑みを向けられて、和葉はいたたまれないような気持ちになる。
(悪いことをしたわけではないけれど、もし沙月さんがあの一件で傷ついていたのだとしたら……)
あれこれ考えてしまって、彼女に「また店にいらしてくださいね」のひと言を言えずにいた。
「沙月」
雑踏の奥から背の高い男性が駆けてきて、彼女を呼ぶ。彼に目を留めた沙月は、大輪の花が咲いたような笑顔を見せた。同性の和葉でも、思わず見とれてしまう美しさだ。
それだけで、長身の男性が沙月の思い人であることがわかった。
彼は沙月より年上、三十代前半くらいだろうか。ダークグレーのスーツにブルーのネクタイ。ちっとも派手な装いではないのに、とても華がある。さらりと流れる長めの前髪、目元も口元も、上品で優しげな印象だ。ワイルド系の柾樹とは、またタイプの違う美男子だった。