S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 円城寺家を去ることになったあの日も、最後にふたりで立派な松に別れを告げたのだ。

『まぁ、柾樹お坊ちゃんとそんな約束を?』
『うん! 和葉はまーくんのお嫁さんになるんだよ』

 和香子は目尻に涙をにじませて、うれしそうに笑った。

『よかった。和葉の花嫁姿、楽しみにしてるからね。きっと、すごく綺麗よ』

(いつか、お母さんみたいなお母さんになりたいな)

 大好きな和香子の笑顔を前に、和葉はそんな夢を抱いた。

『和葉ちゃん。お客さまから、こーんなに大きい苺をもらったの。一緒に食べよう』

 いつもオシャレで、楽しい唄菜。ひとりっ子の和葉にとって、姉のような存在だった。

『和葉ちゃん。このお洋服、唄菜のおさがりなんだけど着てみない?』

 うっとりするほど綺麗で上品な寧々。憧れてやまなかった。

 そして――。

『誰よりもかっこよくて、誰よりもすごい男になって、和葉を迎えに行く』

 なんでもできる完璧な王子さまに見えて、実は繊細で傷つきやすい少年だった柾樹。でも、彼のそんな一面を知っているのはきっと和葉だけで……それがとても嬉しかったのだ。

 彼と過ごす時間は、ほかのどんな時間よりも楽しくて幸せだった。
 大切な大切な――和葉の初恋。

(忘れていたなんて信じられない。あんなに大切だった時間、大好きだった人たちを――)
 
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