S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「三浦先生のせいじゃないですよ」

 柾樹もそう思っているはず。「人を助けるのは医師の使命だ」と彼はさらりと言いそうだ。
 柾樹はエゴイストなように見えて、実はそうじゃない。たとえ自分が損をしても、人を助けてしまう性なのだ。和葉のことも、育郎のことも、沙月のことも、当然のように助けてくれた。

「けど……もう僕は、円城寺先生にこれ以上迷惑をかけるくらいなら医師の道を諦めたほうが――」

 泣き言を言う彼の言葉を、和葉はぴしゃりと遮る。

「それは絶対に違います。彼はそんなこと望まないと思います」

 まっすぐに裕実を見つめて続けた。

「むしろ、柾樹さんは三浦先生を加害者にしたくないから、転げ落ちてきた女性を助けたんだと私は思ってます。えっと、これ以上は柾樹さんの口から言うべきことなので……」

 和葉は言葉をにごしたが、自分と柾樹はきっと同じ気持ちだと思う。

〝全部乗りこえて、立派な医師になれ〟

 彼はきっとそう言うだろう。

 病室で、柾樹はスヤスヤと眠っていた。落ちたときに怪我をしたのか、こめかみの辺りにガーゼを当てられているが、顔色は悪くない。和葉はホッと胸を撫でおろした。

「ぐっすり、気持よさそうに寝ちゃってさ。まったく人騒がせなんだから」

 憎まれ口を叩いている唄菜も、安堵の顔だ。

「慌てて出てきてしまったから、私たちは一度帰るけど和葉ちゃんはどうする?」
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