S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 お産の進みには個人差がある。陣痛の序盤が長引く人もいれば、分娩台に乗ってから苦戦する人も……寧々に教えてもらってそれは理解しているのだが、いざ自分のこととなると焦りと不安にさいなまれる。この苦しみが永遠に続くような気がして、弱気になってしまう。

(や、やっぱり柾樹さんにそばにいてもらえばよかったかも……。いやいや、なに考えてるの!)

 慌てて自分を叱咤する。彼の背中を押したのは和葉自身だ。

『離れていても、柾樹さんの気持ちはちゃんと私のところに届きます』

 彼にそう伝えたときの気持ちを、あらためて思い出した。

(しっかりしなきゃ! 私ががんばらないと、手術に向かった柾樹さんがその選択を後悔することになっちゃうもの)

 医師の彼を、妻として支えていくと誓ったはずだ。

(私たちの赤ちゃんも、きっと今、必死にがんばってくれている。私が弱音を吐いてる場合じゃないわ)

「あ! いい感じよ」

 モニターを見つめる助産師さんが明るく伝えてくれる。

「で、ですよね。今、ものすごい痛みが……」

 お産が進む=痛みが強くなるということだ。苦しいけれど、この痛みが赤ちゃんをこの世に誕生させてくれるのだと思えば、がんばれる気がした。

「あぁ、でもやっぱり痛い! ものすごく痛いです~」
「痛くならないと、いつまでも赤ちゃんに会えないからね。がんばるしかないのよ!」
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