二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「……涼先生……」

 普段は可愛らしい小鳥の囀りのような香澄の声が、地獄の底から這い出てきたように低かった。
 その声が発する圧力は、自然と涼の姿勢をいつも以上に正してしまった。

「これは……どういうこと……ですか……?」
「か、香澄……?」
「どうして、今日発売のくじの子達がこんな悲しい姿になってるんですか……?」
「そ、それは……」
「ここにあるもの、全部勇気さんにお願いしたいリストに入ってるものばかりなんです……。まさか、勇気さん……勇気さんに何かあったんですか……?」
「え?」
「だって、あの勇気さんがこんな風に神グッズを雑に扱うはずないです!フィギュアだって観賞用と愛でる用とおすすめ用と保管用と墓場に持ち込む用を買うような、ヲタの神のような方なのに」
「…………ん?」
「もしかして事故に遭った……?もしそうだったらどうしよう……涼先生!勇気さんから何か聞いてませんか!?このグッズ、どこにあったんですか!?」

 涼は、自分がやらかしたことを棚に上げて、香澄が勇気を褒め称え、かつ心配していることに心底ムカついた。
 だから、言ってしまったのだ。
 香澄の地雷になる言葉を。
 拓人が聞いたら

「バカ!?能無し!?弁護士にあるまじき失態にも程がある!!」

 と呆れを通り越していたことだろう。

「彼じゃないよ」
「どういうことですか?」
「僕だよ」
「涼先生……?」
「僕が、このグッズをボロボロにしたんだ」
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