二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「ど、どういうことですか」

 顔面蒼白な香澄が、震えた声で涼に尋ねた。
 涼も涼で、言わなきゃ良いことを言ってしまった後悔で、木綿豆腐の色くらいには顔面真っ白になっていた。
 だが、一度口に出してしまったものを取り消すなんてできやしない。
 まして涼は、自分の発言一つで誰かの人生を左右する立場にいる。
 そう易々と訂正するべきではないと涼は考えていた。
 結果的には、この時ばかりは光の速さで訂正すべきだったと、後々涼は反省することになるのだが。

「僕が、彼から預かったんだ」

 決して名前を言いたくない涼は、ギリギリ香澄に伝わるように伝えた。そしてしっかりと

「え、勇気さんから!?」

 と伝わってしまったことに、さらに涼はイラッとしてしまった。

「そうだよ。入口まで来てたけど君の体調が悪いことを伝えたら、すぐに帰ってくれたよ」
「ど、どうして……そんな勝手なことを……」
「香澄?」

 この時の香澄は、青鬼が急に赤鬼になったかのように、今度は真っ赤な顔をして涼を睨みつけていた。
 こんな香澄も見たことがなかった涼は「怒った顔も可愛いな」とはとても思うどころじゃないくらい、心のゆとりをなくしていた。
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