二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「帰属欲求承認……?」

 言語の知識としては、涼の脳みそにしっかりインプットはされている。
 だが、それが一体勇気と香澄の関係性に何の関係があるというのか。

「そう。私たちはね、好きなものはとことん熱中したくて仕方がないタイプなの。法律家で例えるなら、あんたみたいに『暇だから六法全書全部覚えてみました』じゃなくて、『六法全書が好きでたまらないから、読み込んでいた内に覚えてしまいました』というタイプ」
「……ああ」

 そういえば、そんな人間が大学時代にいたかもしれないな、と涼はふと思い出した。
 そいつは知識だけは妙に知っていても、応用が効かない。
 そのためか、なかなか司法試験に合格することができない。
 そんな風に講義室で愚痴っていたことだけ、印象的だった。

「私と香澄、それに勇気は、まさにその、好きだから覚えたい、知りたい、語りたいというグループに属するの」
「香澄を君たちと同グループに入れないでくれないか」
「あんたがどう言おうと、そういうものなんだから仕方がないでしょう。そもそも香澄は、私と同じグループだって言うとものすごく喜ぶわよ。だってあの子、私のこともだーいすきなんだから」
「…………」

 涼の心の中に、拓人への嫉妬の炎が再びつきかけたが

「分かってるでしょうけど、今変なことしたら、ここで話やめるわよ。そしてあなたは……ジ、エンド」
「くっ」
「香澄に嫌いって言われたまま、おめおめと逃げ帰るが良いわ。安心しなさい。あんたの遺伝子は私の遺伝子と同じようなものよ。私がちゃーんと……赤ちゃん可愛がって、同じグループに入れてあげるから」

(冗談じゃない……香澄も赤ちゃんも、僕の宝物なんだ……)

 すでに、たまごなんちゃらとひよこなんちゃらという雑誌を読み込むことにより、涼の脳内では香澄と赤ちゃんとのスイートライフのイメトレはしっかり出来上がっている。
 脳内では何度も何度もオムツも変えたし、お散歩もした。
 夜泣き対策に良いと言う歌はたくさんスマホにブックマークした。
「パパ」と呼ばれてデレッデレになる自分もちゃんと想像ができた。
 まさに絵に描いた香澄と赤ちゃんとの幸せな生活は、あとほんの数ヶ月で手に入る。
 それを、自分の選択1つで失うことだけは、何が何でも避けたいと、涼は思ったので。

「……続きを…………」
「お願いします、は?」
「………………続きを…………お…………す……」
「肝心なところが聞こえないのが、ほんっっとうに気になるけど……ここは譲歩してあげるわ。だって私は大人だから。誰かさんと違って、ね」

 そう言うと、次に拓人はこうボードに書いた。

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ヲタクとは、同じ趣味を持つ仲間たちと交流し、情報を共有する。
そうすることで、自分が愛するものに対する理解を深め、さらに愛情を育てることができる。
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