二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 そういうわけで、目の前のクソ邪魔な銅像もどきには、どうにかヲタと言う聖なる種族の生態を学習してもらった上で、これ以上面倒を起こさないでほしいと拓人は真剣に頭を悩ませた。
 まして、香澄の体は本当に大事な時期。
 下手すれば命の危機だった状態については脱しているものの、出産を迎えるまでは油断ができないのだ。
 それに……色ボケクソ涼は忘れているかもしれないが、拓人は嫌と言うほど思い出す。
 香澄はかつて、自分の命を粗末にするタイプの人間でもあったことを。
 だから、拓人はいつも不安になる。
 涼が自分のところに駆け込んでくる度に、香澄を傷つけてきたのではないか、と。
 そしてその傷がまた、香澄を闇へと引きずり戻してしまうのではないかと。

(いっそ、早くこの色ボケが冷めてくれればいいのに)

 何度も拓人はそう願った。
 そうすれば、香澄と子供は自分の家族として、安心して囲うことができるから。
 にも関わらず、涼はこうしてエベレスト級プライドを香澄のためだけにあっさりと捨て去ってここに来る。
 絶対に頼りたくなかったはずの、涼にとっては下級生物以外の何者でもなかったはずの自分の元に……。
 だからなのだ。
 本当はめんどくさいし、こんなことのために時間を使っている場合じゃないはずの拓人が、わざわざ、ヲタクど初心者の涼のために講義を開いてあげてるのは。
 ミジンコの心臓細胞くらいには、涼のことを香澄の旦那として認めてやってもいい……と拓人はつい最近ようやく思い始めたのだ。

「ちょっと、聞いてるの」
「…………6時間…………」

(まだそれ引っ張るんかい!)

 よほど、ダメージがすごかったのだろうか。
 呆然と床を見ている涼を見て、流石に可哀想になった拓人が、「好きの裏返し」であることを伝えようかと思った時に、それがきた。

 ピンポーン
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