二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 涼は、拓人に押し込まれたとある場所で息をひそめていた。

(どうして、僕がこんなところに……)

 ぶつくさと心の中で文句を言い続けていた拓人だったが

「さ、香澄。お入りなさい」
「はい……」

(香澄……!?)

 愛する香澄の声を聞いてしまったら、そんな愚痴なんかあっという間に吹っ飛んでしまった。

「お邪魔します……」
「あら、私とあなたの仲でしょう?邪魔なんてこと、ぜーったいないから。むしろいつでも来なさい」

 自分に聞かせるためなのか、拓人がいつも以上にハキハキした滑舌でそう言ったのが、涼は腹立たしかった。
 だが、自分の今置かれた状況は分かっている。
 このまま香澄にそっぽ向かれてしまうくらいなら、下げたくない頭はいくらでも下げる。
 実際今の涼は、文字通り床に這いつくばっている状態だったりするのだが。

「さ、香澄。そこのソファにお座りなさい」
「あ、はい……」
「待って香澄」
「え?」
「できればそうね…………入口側の端っこに座るんじゃなくて、窓側の端っこに座ってちょうだい」
「どうしてですか?」
「ん?きっとそこの方が座り心地が良いから」
「は、はあ……そうですか……」

 同じソファに座り心地もへったくれもないだろうと、涼も思ったのだがその答えはすぐに分かった。

「あ、あの……先輩……?」
「どうしたの?」
「なんか……お尻の下が……動いているような……?」
「ああ、気のせい気のせい」

(気のせいじゃないだろ……!!)

 そう。涼が今いるのはソファの真下。
 そして、香澄が座ったのはまさに、涼の頭上だったりする。
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