二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「一応聞くけど……あいつ、何した?殺る?」
「へっ!?」

(殺るってなんだ、殺るって……)

 拓人の言い方が気になる涼ではあったものの

「やめてください!涼先生は悪くないんです」

 などと、可愛くて仕方がない香澄に庇われたもんだから、涼の気持ちは浮き立った。
 
「そんなこと言ったって、じゃあどうしてあなたそんなに泣いてるのよ……」
「そ、それは…………」
「ほら、鼻水拭きなさい。これあげるから」
「あ、ありがとうございます……」
「あーあ。もう、そんな顔、あの変態野郎に見せられないわね」
「…………ですよね…………」

(ですよね? 香澄の顔ならどんな顔だって愛してるんだぞ僕は。余計なこと言うな拓人……!)

「でも、私の前でだったらいくらでも見せてくれて良いからね」

 そう言いながら、拓人はわざと涼の体に圧をかけるように座り直す。
 声が出そうになった涼は、口元を咄嗟に抑えてことなきを得たが

(拓人……お前は一体何をしたいんだ……!)

 早く香澄の本音を聞き出すなら聞き出してくれ。
 そうしたらすぐにでもここから飛び出して香澄を抱きしめるのに。
 そう、涼が思っていたのだが、拓人の口からは香澄の本音を聞き出そうとするどころか

「香澄ちゃんが落ち着くまで、別のお話をしましょうか」

(はあ!?)

「例えば、この間から始まったあのアニメの公式カップリングは誰か……とかね……」
「あ、あのアニメですか!?」

 香澄の声が明るくなった。
 間違いなく、拓人が提案した話題に食いついた証拠。
 そこから始まった、自分には全く理解できない呪文のようなワードの数々を聞きながら涼は察した。
 拓人は、やはりそう簡単には涼の味方になどなってはくれないのだと。
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