二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 改めて、涼は過去に二次元と結婚したという人たちの情報を集めた。
 最初に香澄からその話を聞いた時は、ショックで調査を怠っていたので、実際ちゃんと事例を調べるのが今が初めてだった。
 そういうサービスをしている企業が存在し、すでに多くの人が二次元の愛するものとの結婚をしていたのだ。
 涼で例えるなら、フェラーリと結婚するということなのだろうかと、涼は想像してみた。
 自分が白いタキシードを着た横で、フェラーリがウエディングドレスを被せられてる様子は、シュール以外の何者でもない。
 教会で愛を誓うなら、香澄じゃないとダメ。
 香澄の横に立つなら自分以外は認めない。
 涼は、ここでも香澄への執念とも言える愛を自覚した。

(あれ……?)

 涼は、実際に二次元と結婚した人のインタビューの中に気になる文言を見つけた。
 そこに書かれていたのは、ただ日常をこれまでと同じように穏やかに暮らしていきたいという、その人のささやかな願望。
 それは、香澄もかつて望んでいたこと。
 もちろんそれは、香澄が傷つけられ続けた結果見つけた防御策だったと分かる。
 それでも涼は、変わることを拒絶し続けた香澄に何度も心にパンチを喰らいながらも、香澄と自分の日常を、香澄にとって穏やかなものになって欲しいと真剣に願い、行動し続けたつもり、だった。
 この手の話は、何も「二次元と結婚」だけではなかった。
 一度、涼はゴミ屋敷トラブルの弁護を引き受けたことがあった。
 それまで涼には縁がなかったような、パンパンのゴミ袋が隙間なく山盛りにされている家に住んでいた、老婆というにはまだ若い女性がクライアントだった。
 理解できなくとも、弁護のために理解をする努力は必要。
 だから涼は、女性に尋ねた。

「何故、こんなにもゴミを放置するのかと」

 すると女性はこう答えた。

「人は、ちょっとしたことですぐにいなくなってしまうけれど、ここにあるものは勝手にいなくならない。だから私は寂しくないのよ」

 そんなことを涼は思い出して、もしかしてと1つ仮説を見つけた。

「拓人」
「どう?わかった?」
「かも、しれない」
「普段は自信満々の芹沢涼が、やけに自信なさげじゃない」
「そういうわけじゃない。ただ……」

 涼は、ぎゅっと手を握りしめた。
 もし、その仮説が正しかったとしたら、それは間違いなく香澄の心の傷そのものを受け止めることになるから。
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