二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 涼は、そんな風に強気の発言をしてみたものの、内心ではものすごく焦っていた。
 何故、香澄が自分ではなく『二次元と結婚できるなら最高か』と発言したのか。
 その理由が、まだこのタイミングでも掴みかねていたから。
 しかも涼は、香澄からプロポーズを断られ続けてもいた。
 正確に言えば、何度か「いつ届け出しに行く?」と涼が尋ねても

「ごめんなさい、まだちょっと……」

 と、濁されてばかりいた。
 香澄のこれまでのことを考えれば仕方がないと、拓人に言われなくても分かっているつもりだった。
 ただ、広い心で彼女の心が整うのを待てば良いのだと、何度も自制した。
 それでも、届けを出すことを躊躇われるだけで、こんなに不安な気持ちになるなんて、涼は知らなかった。
 これまでずっと、離婚に関する仕事は何度もしてきたというのに。
 たった1枚の紙切れごときでと、心の底では馬鹿にしてきたこともあったというのに。
 そんな過去の自分が今の自分を見たら、なんて滑稽なことをしているのかと笑うだろう。
 でも、今の涼はとても笑えない。
 紙切れ1枚にハンコを押してもらえないことで、夜眠れなくなることも、香澄のおかげで知ってしまったのだから。
 そんな香澄が自ら「結婚最高」と言った相手が二次元。
 何故自分がダメで、二次元が良いのか。
 もしも、その答えに辿り着くことができるのなら、香澄との関係がまた変わるかもしれない。
 そんな希望と不安でぐちゃぐちゃになりそうな心で、涼は拓人からの課題に向き合い始めた。
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