二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 そんな風に男どもがわちゃわちゃしている間、話題の中心人物である香澄はスーパーに足を運んでいた。
 お腹が大きくなってから「絶対ネットスーパー!もしくは僕がいる時以外いっちゃだめだよ」と釘を刺されてはいたのだが、今日はその約束を破ってでも、立ち寄りたかった。
 それは、この後帰ってきてくれるであろう涼を、自分にできる精一杯の手料理で迎えたかったから。
 実は、これまで1度も涼のためにご飯を作ったことは、香澄は1度もなかった。
 いつも涼が何かしら作ってくれたり、拓人からの差し入れがあったのだ。 

「今時、妻が夫のためにご飯を作ってやるなんて考えは古い!二人で分担が基本よぉ!」

 という拓人の主張もあったからなのだが、香澄は心のどこかで申し訳なくも思っていた。
 何度か「私が作ります」と提案したこともあったが、その度に涼は軽く香澄の額にキスを落としてから

「僕が君を落とすチャンスを奪わないで」

 と繰り返してくるので、香澄は何も言えなくなっていた。
 そんなことしなくても、もう十分香澄は涼に夢中になっているというのに。
 これ以上は、もう後戻りなんかできなくなりそうで怖いと、香澄は内心怯えてもいた。
 けれど、そんなことお構いなしに、涼はぐいぐいと香澄の心に入ろうとしていたのだ。
 これまでは、受け入れることでいっぱいいっぱいだった香澄。
 だけど、今の香澄は違う。
 受け入れるだけじゃなくて、涼に何かを与えるようになりたい。
 だから、香澄は決めたのだ。
 今日は、自分の気持ちを込めた手料理を、涼のために作りたいと。
 そして、今度は自分から口説きに行く。
 涼先生が大好きです。
 だから、私を奥さんにしてください。
 その想いを伝えるためにはどんな料理がいいだろうかと、スマホ片手に検索しながら、香澄はスーパーの中を歩き回った。
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