二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 それから、涼は二人分のシチューを、香澄はサラダやパンをダイニングテーブルに運んだ。
 これまでは、何だかんだとどちらかが食卓の準備をしており、二人ですることはなかった。

「これで、準備できたかな?」
「あの……涼先生……」
「ん?」
「実は、先ほどからずっと気になってたんですけど……」

 そう言いながら香澄は、涼が落としたまま放置して、気がついた香澄がソファ近くのローテーブル上に避難させていた巨大花束をちらりと見た。

「あの花束は?」
「ああ……」

(しまった、香澄のビーフシチューが嬉しいあまり、本題を忘れそうになっていた)

 涼は花束を持ち上げ、そのまま香澄に手渡した。
 香澄も、なんとなく自分のためなのかな……ということはこれまでの経緯から察してもいたので、照れはしたもののしっかりと受け取った。
 そして、ある違和感に気づいた。

「重いですね……?」

 元々、自分の顔よりも大きい花束なんて受け取ったこともなかったので、一瞬これくらいになるのかな、とも思ったものの、香澄も花束自体をもらったことがないわけではなかった。
 小さい頃に、自分の顔よりはほんの少し小さいかすみ草の花束をもらったことはある。
 振り回すことができるくらい、軽かった。
 そして振り回した時に、母親から殴られたことも思い出した。
 だからだろうか、ほんの少し香澄の胸がチリッと痛くなった。

「香澄?」
「な、なんでもないです」

 涼を心配させてはいけないと、香澄は「いい匂いですね」と花束の匂いを嗅ごうとした時、中にきらりと光るものがあった。

「え?」

 香澄は花をかき分けて光るものの正体を確認して、息が止まるかと思った。
 そこにあった……いや、いたのは、香澄の推しキャラのアクスタだった。
 それも、かなりのプレミアもの。 
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