二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「やだ勇気。そんなに縮こまって。さっきのようにやればいいのよ」
「さ、さっきって……」
「このヲタクの敵!もっと俺らのことを考えろ!って、そこの歩く公害に啖呵切ったのはどうしちゃったのよ!かっこよかったのに」
「そ、そんなこと……」

 しない、とは勇気は言い切れなかった。
 正確に言えば、ここに来てから数時間のことはよく覚えていない。
 せいぜい、涼のグッズの件を聞いてカッとなったことくらいか。
 
「おおおお俺……マジで何したんですか?」
「ん?すっごいかっこいいこと」

 拓人にウインクされながらそう言われたので、勇気は信じたいと思った。
 さて、そんな勇気に課せられたことが、勇気の人生で絶対に一生に1度遭遇するかしないかの、誰かの人生を思いっきり左右すること。下手したら、恨まれるどころでは済まない。
 だが、拓人も涼も言葉にはせずとも、目でしっかりと圧をかけてくる。

(ただでさえ、目力つよつよの二人なのに……!!!)

 勇気は、この二人にいつも挟まれ、溺愛されている香澄の心臓の強さを心から尊敬した。
 そんなこんなで、勇気はこうも思った。こんな大事な局面を任されることは、非常に光栄だ。
 特に、血がつながらないとはいえ、大事に思ってる香澄には本当に幸せになってほしい。
 だから、勇気は自分が思いつく最も的確でシンプルな回答を口にした。

「推しに祝われたら、嬉しいんですよね。誕生日とか。俺たちは推しを祝うことも多いけど、だからこそ、そんな推しと大事な記念日を過ごせたら、最高の1日になるんです。少なくとも俺はそうです。香澄ちゃんも、推しに結婚を祝ってもらったら嬉しいって思うんじゃないでしょうか」

 我ながら、なんてプレゼンが下手なんだと勇気は目を瞑りたくなった。
 でも、それをしなくて正解だった。
 涼も拓人も、勇気に感心したと言いたげな眼差しを送ってくれたから。
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