二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「そ、そんなことがあの後であったんですね」

 香澄の何気ない呟きに、涼は違和感を覚えた。

「あの後?」
「あっ」

 涼が尋ねたことで、香澄は自分の失言に気づいた。
 涼が勇気からオタク講義を受けていた様子を香澄が見たことは、秘密にしようと思っていたはずだった。

「香澄?何を隠してる?」
「ええと……」

 涼に甘く見つめられたことで、香澄は観念した。香澄は、自分をトロトロに溶かしていくこの目に弱くなっていた。

「実は、見たんです」
「何を……」
「勇気さんが……涼先生に……色々教えてた様子」
「あ……」

 それを聞いた涼の顔色が変わったことに、香澄もすぐに気づいた。

「ご、ごめんなさい!わざと見たわけじゃなくて」
「うん、いい、いいよそれは」
「でも」
「いいんだ、香澄。それより……」

 涼はそう言いながら、香澄を自分の方にぐっと引き寄せた。
 あともう少し近づけば、唇が触れ合う距離まで。

「あんな僕を、君はどう思った?君に嫌われたくて足掻きまくったのが、君が見た僕だ。幻滅した?」
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」

 ただでさえ、世界が違うと思っていた涼が、自分の世界を知ろうとしてくれたことだって嬉しかったのに。

「どんな姿の涼先生もカッコいいから、嫉妬します」
「それは困るよ。君に嫉妬されたいんじゃない。愛されたいから」

 唇は徐々に近づいていく。

「ねえ香澄。僕からの大事な話、聞いてくれる?」
「私の話も、聞いてくれますか?」
「もちろん」

 二人は、それからビーフシチューのことを忘れて深い口づけを始めてしまった。
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