二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 それから、どれだけ二人がキスをしていたかと言うと……。

「シチューすっかり冷めちゃいましたね」
「でも、こうして温めることができるから問題ないよ」
「そうですね」

 という感じで、湯気までしっかり出てる程の熱々シチューが、すっかり冷めてしまい、温め直す必要が出てくる程の時間だった。
 ちなみにいつもみたいに電子レンジではなく、鍋での再加熱を選んだのは、このシチューを大事に食べたいと言う二人の考えからだった。

「今度は、先にちゃんと食べましょうね」

 香澄はそう言いながらお皿にシチューを丁寧によそった。

「香澄が可愛すぎるからいけないんだからね」

 涼はそう言いながらも、しっかり両手で受け止めて、ダイニングテーブルまで運んだ。
 そうして、今度はちゃんと二人でダイニングテーブルに座り、手を合わせて「いただきます」と言った。
 その動きは、まるで二人が10年以上もの長い年月、共に暮らしたと周囲から思われても不思議ではないくらい、ぴったりだった。
 それは、食事の時も同じ。
 今まで、特に香澄の方は食事をする時に涼がいると緊張していた。
 うまく食べられるだろうか、変な作法になってないだろうか。
 だから、用意してくれたご飯の味すら覚えていないこともしょっちゅう。
 でも、今日は違った。

「トマトとシチューってこんなに相性いいんですね」
「他にも隠し味あるみたいだよ。試してみる?」
「そうですね、涼先生はどんな味が好きですか?」
「香澄が作るならどんなものでも食べたいな」

 次から次へと、会話が生まれてくるのだ。
 それが、香澄は心から楽しくて仕方がなかった。
 この時間が永遠に続けばいいとも思った。
 だから、この言葉が香澄から出たのは、今の香澄にとっては自然なことだった。
 
「涼先生と結婚したら、こんな毎日が過ごせるんですね」

 その瞬間、涼の手からスプーンが滑り落ちた。
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