二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 涼が手にしたのは、手のひらサイズの四角い袋。
 パッケージに桃が描かれている。

「入浴剤ですか?」
「そうだよ」

 涼は封を切って中身を取り出す。
 桃の形をしたタブレットが出てきた。

「可愛い……」
「やっぱりね。こういうの好きそうだと思ったよ」

 そのまま涼は、タブレットをお湯の中に落とすと、薄桃色がじわじわと広がっていった。

「こういうの好きそうって?」
「香澄の部屋を見ていれば分かるよ、ちょっとした小物1つでも、花や猫、リボン、ハートとか、可愛いマークがついてるものが多いから」
「そ、それは……」

 香澄の部屋にある雑貨のほとんどは100円ショップや300円ショップで買い揃えたものばかりだ。
 ただ、用途を満たすためだけであれば、マークも柄もないシンプルな物でも十分よかった。
 けれど、どうせ同じ金額を払うならば、少しでも気持ちを盛り上げるものがいいと思って選んだ。
 今思うと、もう少し部屋のコーディネートを意識して選べばよかったのかもしれないと、香澄は自分の部屋の雑多さを思い出して後悔した。
 そして、そんな部屋を雑貨まで涼に観察されていたことも、香澄は恥ずかしかった。

「すみません、センスが悪い部屋ですよね」
「僕は好きだよ。どんな部屋でも」
「え?」
「だって、あそこが香澄の部屋だから、ね。でも……」

 そう言いながら、涼は香澄のお腹を撫でた。

「ひゃっ!」
「僕がいるのに、部屋に閉じこもるのだけは、いただけないけどね」
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