二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する

「あーやっちゃったわ」

　歩く公害が怒涛の勢いで自分の家から去った後、拓人は自分がしでかした大失言を、心から後悔していた。

「あの子は、アイツが絶対的に恐れてる三次元男だから……」

　そう言いながら、拓人はスマホにこんな文字を打ち込んだ。

『ごめん。命の危機。背後に気をつけて。』

　送り先は香澄の義兄、田原勇気。
　実際、血のつながりはないけれど、香澄と濃厚な時間を過ごしまくった拓人だから分かる。
　あの2人は、前世から繋がりがあるんじゃないかと疑いたくなるくらい、よく似ている。

（ソウルメイトなんて、都市伝説だと思ってたけど割と本当にあるのかもしれない）

　知らない人と会った時の、ぶるぶると震える小動物らしさも。
　どもりのテンポも、一方で好きになったもの、ただし二次元に限る……への愛を暑苦しく語るところもそっくり。
　そのため、拓人にとって勇気は、第２の香澄と同じように可愛がりたくなる対象だった。
　ただ、香澄を強烈に溺愛しまくってる涼にとっては、可愛がりたくなるどころか嫉妬の対象になってしまっていたのだ。
　その理由は、香澄が涼には決して向けたことのない笑顔を勇気ばかりに見せているから。