二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 そんなこんなで勇気は、今日もたくさんの戦利品を抱えて、香澄の家にやってきた。

「香澄ちゃん、喜んでくれるかな……」

 背中のリュックにはくじの景品すべて。
 だが、勇気が持ってきたのはそれだけではない。
 手に抱えた紙袋の中には、香澄と勇気がはまっているゲームのグッズがごっそりたんまり入っている。

「本当は、一緒にくじ行けたらよかったんだけど……」

 香澄は妊娠中でしかも今日はほんの少し体調が悪いとのことだったので、香澄の分まで勇気が調達することになったのだ。
 本当は香澄としても

「お、推しのために自分で稼いだ金を自分で推しに投資したい……」
「自分で推しを引き当てたい……」

 などと、ギリギリまで初日に出かけるか悩んでいた。
 勇気もその気持ちは痛いほど分かったので、最初は香澄を外に連れ出す方法も頑張って考えたのだが、タクシーを使ってコンビニを梯子するという方法しか思いつかなかった。
 ただ、2人でタクシー代を計算したときに、欲しいガチャ景品が出た時用に取っておきたい金額になってしまったため

「やめましょうか」
「そうだね」
「使い所は、大事ですからね」
「わかりみしかない」

 という2往復で、この案は排除した。
 ここまで気持ちが通じ合える女の子に巡り合ったことが、勇気にはなかった。
 しかも香澄は、実は言葉にはしたことはなかったのだが……かつてはまっていたアイドル育成ものの推してたキャラにも少し似ていた。
 妹のような存在だとわかってはいるけれど、それとこれとは別。
 やっぱり、香澄と話す時もドキドキしてしまうのだ。
 勇気は、深呼吸をしてから、チャイムを鳴らそうとした。
 その時だった。

「やあ、勇気くんかい?」
「あ!涼さん!」
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