乙女と森野熊さん
家を出て、私達は住宅街を歩いていた。真奈美を駅まで送るためだが名残惜しそうな真奈美に一駅歩かないかと提案し、真奈美も喜んで二人で昼だというのに人気の無い道を歩く。
「ごめんね、急に帰ることになって」
「良いよ、パジャマパーティーも出来たじゃない」
「うん、乙女の寝顔も撮影できたし」
「待って。初耳なんだけど、それ」
「今初めて言ったし」
「その写真どこかに流してないでしょうね?!」
「さぁどうかなぁ?」
真奈美がにやにやと答えて、私は焦ったふりをした。
ずっと真奈美の様子を、周囲に注意を払っているので私には心から笑う余裕が無い。
こんなに気の張ったままいて普通に何時間も過ごすなんて私には無理だ。警察官、いや刑事とか、熊さんもこういうことをするのだろうか。
だからあんなに無表情でいつも冷静なんだろうか。
こんなに気が張っているのに、頭の中は熊さんの事ばかりよぎる。
熊さんが側にいれば安心できることが、こんなにも自分に染みついていることが怖い。
こんな状態で独り立ちなんて出来るんだろうか。
真奈美を守るため気を張っていたはずなのに、自分に対しての急な不安が襲ってきてしまった。