乙女と森野熊さん
「真奈美!」
思わず叫ぶと、真奈美の顔は強ばったまま私に目だけ動かして視線を向ける。
「うるさいな、小娘」
真奈美の隣に立っていた父親がジャージの上着のポケットに手を突っ込み、鈍く光る物を取り出した。
それを見て私は一瞬何なのかわからなかった。まさか折りたたみ式のナイフが出てくるなんて。
父親はそのナイフを伸ばすと、しっかりと片手で持ち手を握る。
「真奈美に入れ知恵をしたのはお前か。真奈美は良い子だったのに、嘘をついてまで泊まるなんて全てお前のせいだろう。
こうやって俺を追い詰めていくんだ、みんな、みんな」
最後は呟くように言いながら一歩父親が足をだし、私は思わず一歩下がる。
「パパ!冗談止めてよ。それ仕舞って、ね?」
真奈美が父親の肩に手をかけ揺すると、その手を父親が勢いよく叩き、真奈美は驚いて動きを止めた。