乙女と森野熊さん
目は据わりぶつぶつと言いながらゆっくり真奈美の父親が迫ってくる。私はゆっくりと下がりながら視線だけ周囲を見るが、住宅街の中だというのに見事なほどに誰もいないし誰も通らない。
今、私が逃げてしまったら、その後で真奈美に危害が加えられないだろうか。
それなら私がここで戦う方が真奈美の安全に繋がるはずだ。
私はぐっと奥歯を噛みしめ、立ち止まり足に力を入れ踏ん張る。
「それ、仕舞ってください。警察呼びますよ」
精一杯睨みながら言う。
だが父親の足は私の方に近づき、私はいつでも動けるよう間合いを取った。
「やめて!」
真奈美が父親の腕にしがみついたが父親は真奈美を恐ろしい形相で睨むと、ナイフを持っていない手で真奈美の顔を勢いよく叩いた。
バシン!という音が響き、真奈美は衝撃でよろめきその場に座り込む。