乙女と森野熊さん


「乙女ちゃん」


私はへたり込んで真奈美を抱きしめたまま見上げる。

目の前に見えるのは熊さんなのに、それがわかっているはずなのに声が出ない。

熊さんが私の前に来てしゃがむ。


「乙女ちゃん、もう大丈夫だから」


優しい声と、そっと大きな手が私の頭の上に乗り、頭のてっぺんから身体を覆っていた氷が溶けていく。


「くま、さん」


声が震え、思わず胸の中からこみ上げてきたものに喉が締め付けられる。

私はやっと我に返り抱きしめていた真奈美を見れば、真奈美は呆然と向こうにいる男性達から立ち上がらせた父親を見ていた。


「森野さん」


後ろから年配の女性が二名やってきて熊さんに声をかける。


「君が、佐藤真奈美さんだね?」


しゃがんだまま熊さんが聞くと、真奈美は強ばった表情で小さく頷く。

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