乙女と森野熊さん

「一番のネックは費用?」

「あ、いや、大学までずっと勉強してるの嫌だなぁって」

熊さんから話しかけてくれたので、私はそれをアピールした。

「費用の他には何?」

勉強って言ったのに。
少しくらいはそれも真実なのに、熊さんには嘘だと思われてしまった。

「他に何を俺に遠慮してるんだ」

思わずびくっと身体が動いた。
いつになく熊さんが怒っている。
俯いているけれど、大きな熊が怒りのオーラを静かに放っているようで怖い。

「乙女ちゃん」

私が怖がっていることに気が付いたのか、少しだけ声が和らいだ気がする。

「本当の気持ちを言ってくれなければ俺にはわからない。

乙女ちゃんが俺にとても遠慮しているのはわかってる。
だけどね、いつも引き取ってくれたとか迷惑をかけているとか言うけれど、俺はそんなこと一度も思ったことは無いし、迷惑だなんて思ってもいない」

ゆっくり語りかけられる言葉。
でもその言葉を素直には受け止められないし、私だって苦しく思う部分があるのだ。
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