乙女と森野熊さん
「乙女ちゃんは俺といるのが苦痛?」
初めての質問に思わず顔を上げ、無表情なのに何か目が訴えているようで私は思わず首を振った。
「俺はね、乙女ちゃんと一緒に暮らしたいんだよ」
ぐっ、と喉が締め付けられた。
優しいような、訴えるような声に思えて、私は戸惑う。
熊さんは少しだけ目を伏せると、再度私の目をしっかりと見つめた。
「花たちの事故を聞いて乙女ちゃんの家に駆け付けている時、俺は怖かったんだ」
聞いたことの無い話しに、私は戸惑う。
「もしかして乙女ちゃんが先に事故を知り、自らの命を絶っていないか、いや違う何かに巻き込まれて亡くなってはいないかと」
伏せ目がちに話しているその内容に驚いていた。
「俺は、家族を亡くしている。両親はある事件で、その後俺を引き取った祖父母も病で立て続けに。
全員の葬式をして自分はなんて呪われているのかと思った。
両親の死はある意味俺のせいでもあったからね」
「どういう、こと?」
熊さんの両親の亡くなった話を聞くのは初めてだ。
「高校生になってしばらくした週末のことだった。
俺と両親は祖父母の家に遊びに行くことになっていたんだが、父親が体調を崩して母親は看病のため二人とも行かずに俺だけ行ったんだ。祖父母は特に俺に会いたがっていたから。
だが俺の居なくなった日の深夜、強盗に入られて俺の両親は殺された。
俺は既に体格がかなりでかくてそれなりに強かった。だから邪魔な俺がいないことを知っている人間が盗みに入ったんだ。そう、犯人は顔見知り、近所の人間だった」