BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
叩かれた頬に右手を当て、目の前に立つ父親をギッと睨み付ける。
希乃愛が家にきて変わったと思ってたのに……。
「結局、手ぇ出すんじゃん。お父さん、全然、変わってないよ!お姉ちゃんの時だって………叩いて、怒鳴って、世間体気にしてさぁ、お姉ちゃんだってお父さんに追い詰められて出てったんだよ!!」
「……香江」
お母さんが私の台詞を遮ろうとしたけど、溢れるように飛び出した言葉は止まらなかった。
目頭も熱くなって、涙もポロポロとこぼれ落ちる。
「み、みっくんにだって泣きながらうちの娘をよろしくお願いします~なんて言ったクセに、結婚歴があるの知った途端すぐ手のひら反して……。勝手に期待して勝手に怒って……、子供は駒じゃないし、そんなのお父さんが全部悪いんじゃん!!」
震える声が玄関に響き渡った。
肩で上下に大きく息をして、はりつめた空気と息苦しい雰囲気に包まれる。
きっと、この場で1番気まずいのはみっくんだろうけど。怒りがおさまらない。
「香江ちゃん、大丈夫?あの、お義父さん……」
なのに、大きな手が優しく肩に置かれるから、胸がグッと熱くなる。
「離婚歴があること、婚姻届の件も先走ったものですみませんでした。でも、香江さんとの将来は真剣にお付き合いをさせて──」
「お前の話なんて聞きたくない」
お父さんがみっくんの言葉を遮った。そのまま、勢いよく背中を向けてドシドシと廊下を歩いていく。
「ねぇ、ちょっと五月蝿《うるさ》くしないでよ。希乃愛起きちゃうから……って、どうしたの?」