BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



一連の騒動を知らないお姉ちゃんが奥の部屋から出てきたけど。希乃愛は寝たままなんだ、良かった、と姉の顔を見て少しほっとした。



「お姉さん、騒がせてしまいすみません……」

「みっくん……。もう遅いし、希乃愛も寝てるし、とりあえず帰って頂いていいかしら?」


お母さんの"話はまた後日ね"と続けられる言葉に、みっくんが失礼しますと頭を下げて扉がパタンと閉められる。
そのドアはとても厚く、重たく感じた──。








「そっか、三槻さん結婚歴があったんだ」

「……」


鼻をズッと啜りながら小さく頷いた。

薄暗い部屋の中。私とお姉ちゃんが並んで横になる。その真ん中にすやすやと眠る希乃愛が寝転がっている。



「そっかー、でも三槻さん(あの人)30なのね。年上だとは思ってたけど20代後半位かと思ってたわ」

「……私、お、お母さんまであんな反応すると思わなくて」

「うん」

「お姉ちゃんは駄目だと思う?バツイチの人と付き合うのって」

「それ私に聞くの?知らなかったとはいえ、私既婚者と付き合ってたのよ」

「あっ、そっか!」


思わず大きな声が出た瞬間、隣にいる希乃愛が鼻息を立てるから慌てて口を手で押さえた。
寝返りを打って再び寝息を立てるから、起こさなかったことに安心する。





「私ね、時々思うの。もし、最初からこの子の父親が既婚者だって聞かされていたら……付き合ってなんか無かっただろうし、希乃愛(この子)はいなかったんだろうなって」

「……っ、」


この子の向こう側に横になる姉が手を伸ばし、希乃愛の小さな頭を優しく撫でて、小さく微笑んでから言葉を続けていく。



「ちなみに三槻さんに子供は?」

「いないって」

「じゃぁ、問題ないわよ。養育費取られるわけじゃないんだし」

「そ、そっかぁ。良かった。お姉ちゃんに言われると安心する」



「ふふっ、私は香江の味方よ。それに、希乃愛もあんたが笑ってた方が喜ぶもの」




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