BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
部署内がやけにそわそわしている。
周りがあの噂が本当なのか気になっているのが嫌でも伝わってくる。
「奈良崎さん、この資料のデータ化お願いしていい?」
主任が私のデスクに手を置いて腰を屈めるから、周囲の視線が一気に向けられた。
何で今日に限って部署に残ってる人が多いのか。もう、全員 外回りいっちゃえばいいのに。
「去年はこんな感じで作って貰ったんだけど」
「は、はい」
「三浦さんいないけど、大丈夫そう?分からないことあったら聞いてね」
「頑張ります」
主任は私と違って大人だ。私なんて恥ずかしくて仕方ないのに、彼は周りの反応を全く気にせず平然としている。
駄目だ。ちゃんと集中しなきゃ。きちんと働いてお給料貰うんだから。
エクセルでまとめてグラフにすればいいのか。
高校は商業科だったしパソコン操作はほぼ可能し。引き継ぎの資料も詳しく残してくれたし、去年の三浦さんのを見てなんとか出来そうだ。と、パソコンのキーボードに手を伸ばした。
「あの、こんな感じですか?」
「うん、いいよ。あ、このグラフもう少し右に寄せて」
「はい」
優しい笑顔。三浦さんも「山崎主任は皆に優しい」って言ってたし。もしかしたら、彼女とか特別な人がいるかもしれないし──。
きっと会社の中でも狙ってる女の人多いんだろうな。