BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
恋人同士で行くようなお洒落なお店。
主任はあの大人っぽくて綺麗な女の人と、まだ一緒にいるのだろうか。
「希乃愛、かけちゃいけません」
「やー、かけるのー」
「駄目だって言ってるでしょ!?」
腰に手を当ててキツく大きな声をあげると、希乃愛の小さな肩がビクッと揺れた。
「ちょっと、何を叫んでるのよ?」
脱衣所から母が出てきて、まだ髪が濡れたままリビングに現れる。
「お母さん!希乃愛なんでまだ寝てないの?」
「ごめんねぇ、だって全然寝ないんだもの……」
お母さんが「しょうがないじゃない」と言葉を続けるけど、どうしても納得がいかなくて自身の口調がキツくなってしまう。
「それに、もうやめてよ!主任は希乃愛の遊び相手じゃないんだよ?遅くまで仕事で忙しいんだし、迷惑だって分かんないの?」
「だってぇ、希乃愛が話したいって言うし。山崎さんも……」
「お母さんは希乃愛に甘過ぎ!主任はただの上司だし、スマホを玩具にするのよくないよ!!」
「やーだ、みっくんとおはなしー」
「何よ、みっくんみっくんって。お仕事で忙しいから駄目って言ってるのに分かんないの?」
「むー。ママ、バカ、バカ、きらいっ」
一体、どこでこんな言葉を覚えてきたのだろうか。
「希乃愛がママのこと嫌いなら、ママも嫌いだし!!」
頬を膨らませた希乃愛が反抗的な態度を取るから、カッとなって感情的に声を荒げてしまう。
「ちょっと、香江言いすぎよ。ほらほら希乃愛~。ばーばは希乃ちゃん大好きだよー」
「やーだ、ばーば、きらいー」
「でも、ばーばは希乃ちゃん大好きだよ~」
「うわーーーん!!!」
最悪な夜だった。
お母さんが希乃愛を宥めたけど、希乃愛は大泣き状態、私は母に叱られた。
結局、希乃愛は泣いたまま眠りについてしまった──。