BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



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「ママー!!おかえりーー」

「た、ただいま……ぎゃっ」


家に帰ると希乃愛が"キャーー"と飛び付いてくるから、その勢いで後ろに倒れ込んでしまった。



「えー、ママ、どうしたの?」

「ごめん、ちょっと疲れちゃって……」


私の体に跨いで座る希乃愛が、きょとんと首を傾げる。
いつもなら希乃愛が走ってきても受けとめられるんだけど。今日はそんな元気は残っていない。



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「ほらー、あの子だよ」

「営業課の山崎主任と付き合ってるんだって」

「小さな子供がいるって子でしょ?」


「山崎さんって前に離婚してるじゃない?その原因ってもしかして──……」


なんだろう。前にも同じようなことがあった気がする。

主任と付き合い始めてまだ2日で、私だってまだ信じられないのに。
社内では"私と主任がお付き合いをしていること"が速攻で広まってしまった。



「あの奥のデスクに座ってる子だよ」

「意外。若い子がタイプだったんだねー」


勤務中。違う部署の女の人達が廊下を通りすぎるフリをして、私の事をチラチラと見定めていく。



「山崎さんの恋人って本当?」

「あの写真ってあなたの子供だったの?」


トイレでも、好奇心、敵意、様々な視線をむけられるから。
定時になったら急いで上がり、好奇の目から逃げるように職場を後にしたのだ。


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