最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く
「周防壱だ。俺は志藤組次期組長、志藤尊の正妻で…。」
「従弟!!従弟なんだよ!!」
尊は平和な学校生活をブチ壊される前に、壱の言葉を遮って叫んだ。
「従弟?」
「そ、そう。田舎から東京見物の為に出てきてさ。俺の部屋に泊めてやってるんだ。」
「田舎から?」
マナがそう言って、壱の全身を見やる。
「ああ、だからそんなダサいファッションなんだぁ。顔はいいのに勿体な~い。」
「………。」
しかし、その辛口ファッションチェックを受けて精神的ダメージを被ったのは、壱ではなく尊の方だった。
仲間に背を向け、尊が文字通りの押し掛け女房を問い質す。
「何しに来たんだよ、お前!あと、俺の服を勝手に着るな!」
「だって、愛するダーリンと一緒にいたかったんだもんっ。…しょうがねぇだろ、着の身着のまま嫁いできたんだから。着替え持ってきてねぇんだよ。お前の部屋にある服で、俺が着られるサイズがこれしかなかったんだ。じゃなかったら誰が着るか、こんな罰ゲームみたいな服。」
それは尊がショップ店員の口車に乗せられるがまま購入したビッグサイズのトレーナーだったが、壱が着ると小さいくらいで、真ん中にプリントされたキャラクターは伸びきって悲惨なことになっていた。
「アパートの鍵は!?まさか、開けっ放しにして来たのか!?」
「問題あるか?別に盗られるもんなんて何もねぇだろ。ああ、そうだ、ついでに忘れ物を持ってきてやったぜ、ダーリン。」
そう言って、壱が尊に財布とスマホを渡す。
それから、全く悪びれていない笑みを浮かべて「ま、安心しろよ。万が一、俺達の愛の巣に侵入するボケナスがいたら、俺が香港の奥義で退治してやるからよ。ホワチャー、なんつって。」
「………。」
こ、こいつはどこまで本気なんだ…?
周防壱は昨夜から現在に至るまで、一貫してヘラヘラ笑いを続けていた。
ある意味、ポーカーフェイス。
表情が固定されているから、何を考えているのか、そもそもこれは本当の笑顔なのかすら判然としない。